【文章講座】文章はテーマ(主張)を一つに絞ると書きやすくなる

B!

文章を書く上で「テーマ(主張)」は非常に重要です。と言いますか、主張したいことがあるからこそ、文章を書くのでした(詳しくはこちらも参照)。今回は、テーマに関する考え方や見つけ方など、文章作成のコツをご紹介いたします。

スポンサーリンク

テーマは一つ、コンテンツ(中身)は豊富に

まず大原則として、テーマは一つにします。あれもこれも言いたい場合は、主張ごとにそれぞれで別の文章を書くようにしましょう。そのほうが圧倒的に書きやすく、読みやすい文章に仕上げられます。2つの主張がある場合は、今日はこの主張を書いて、また別の機会にもう一つのほうの主張を書こうとすれば、次にまた書く楽しみも生まれます。

例えば、「万年筆が好きである」というテーマを設定したなら、これで一本、書ききってしまいます。「万年筆は好きだが、コーヒーも好きなので、コーヒーについても書きたい」という場合は、万年筆とコーヒーで別々の文章にします。無理に2つのテーマをくっつけると、「私は万年筆が好きである。その理由は~」という文章と「私はコーヒーもまた好きである。その理由は~」という感じになるので、放っておいても文章は自然とテーマごとに分かれる(別の文章になる)と考えたほうがいいかもしれません。

また、テーマを一つにする理由として書きやすさという執筆上のメリットのほか、主張は伝わりにくいということもあります。一つ伝えるだけでも大変なのに、二つも三つもとなると、何も伝わらなくなってしまいます。こう言っては何ですが、読み手はあなた(書き手)が思っているほどに、丁寧に主張をくみ取ってくれません。書いてあるからわかるだろ、という姿勢ではダメです。わかってもらわなくてはいけない。書いてあることを理解してもらって、納得してもらわなければなりません。

「万年筆が好きである」くらいの簡単な主張だとあまりピンと来ないかもしれませんが、例えば「万年筆は健康にいい」だとしたらどうでしょう。なぜだ、万年筆と健康はどう関係するのか、科学的根拠はあるのかなど、さまざまな疑問がわいてくると思います。そうした疑問に答えていなければ、読み手の理解・納得を得られることはないでしょう。一言二言を添えた程度で「そうかわかった」と言ってもらえると考えるのは安易です。主張を十分に理解してもらうために、言葉を尽くす必要があるのです。これがテーマを一つにする重要な意味です。「テーマは一つ、コンテンツ(中身)は豊富に」とぜひ覚えておいてください。

なお、私たちが通常書く文章はエッセイや作文が中心です。エッセイや作文で何より大切なのは「体験」で、基本的には体験から生じた主張(自分なりの意見や見解)と体験そのものを書くことで文章を構成します。論文やレポートとは異なり、科学的な正しさや論理性はひとまず横に置いておいてもかまいません。上記の「万年筆は健康にいい」という例では、その主張をするに至った体験を書けばOKということです。このことも、文章を書く上で基本的かつ重要なテクニックとな

テーマ(文章の主題)の見つけ方

テーマは基本的には「伝えたいと思ったこと」に設定します。しかし、とにかく書いてみたいと物理的に書くことへの要望のほうが強い場合もあるでしょう。そうした場合、やや強引にテーマをひねり出すこともできます。それは二つの物事をくっつけるという手法です。自分の興味ある物事や思いつく言葉をランダムに紙に書き出し、そのうち2つを選び出してテーマを設定するのです。例えば、「万年筆、将棋、傘、空手、扇子、自転車、お茶、富士山、アメリカ、スマホ、健康」などと書き出して、そのうちの2つを選ぶのです。

先ほど、「万年筆は健康にいい」というテーマの例を示しましたが、これは「万年筆」と「健康」をくっつけて作ったものです。テーマさえできてしまえば、あとは「万年筆は健康にいい」と思えるような体験を書き綴れば、文章は完成します。一例として、「万年筆を持つと文章を書きたくなる。すると、題材を探しに出歩くようになる。歩く習慣が身につき健康になった。つまり、万年筆は健康にいいのである」という流れが考えられます。やや強引かもしれませんが、味わいのある文章はつづれるはずです。

2つの物事をくっつける際は、言葉に引きずられる必要はありません。どういうことかと言いますと、上記では「万年筆」と「健康」をくっつけて「万年筆は健康にいい」というテーマを作ったわけですけど、もっと大胆に「書くことは歩くことである」としてしまってもいいということです。大切なのは発想をすることです。それができれば、もともとどんな言葉でその発想を得たかは、さして重要なことではないのです。

2つの物事をくっつける際、関係の遠いものを選ぶとテーマも文章も面白いものになる可能性が高まりますが、書く難易度は上がります。反対に、関係の近いものや結びつけやすい2つを選ぶと、書きやすい反面、よくある内容になりがちです。最初のうちは、書きやすい題材を選び、慣れてきたら、結びつきにくい2つを選んでみてはいかがでしょうか。

(このブロックは少しおまけの話をします)2つ物事をくっつけるのは、文章作成上の非常に有力なテクニックです。よく入社の作文試験などでも、「スマートフォン」みたいな感じでテーマを与えられることがあると思います。その際、「スマートフォン」という言葉だけを見て書こうとしても、書けるのはせいぜい「スマホとは~」で始まる辞書的な文章です。そこで、もう一つの言葉を持ってきて、自分なりにテーマを設定するのです。例えば、「犬」とくっつけて、「スマートフォンが救った命」のように自分なりのテーマ設定をします。小論文の試験の場合は、イエス・ノーで応えられるテーマを自分で作りだします。例えば、「子ども」とくっつけて、「スマートフォンは子どもに持たせるべきか」みたいな感じです。作文や小論文の試験のある方は参考までに。

大テーマ、小テーマの使い分け

最後に、作文やエッセイを書く際はあまり使わないことですが、大テーマと小テーマに関することに触れておきたいと思います。冒頭で、書きたいことがあれもこれもある場合は、それぞれに文章を書いたほうがいいと言いましたが、どうしても一つにしたい、あるいは一つにしたほうがいいという場合について、その手法についてご紹介します。

結論からいうと、見出しにある通り、大テーマと小テーマを分けます。例えば、「私は、万年筆とコーヒーと将棋とバードウォッチングと読書が好きなので、このことを一つの文章にしたい」とします。この場合、もっとも簡単なのは「私の好きなもの」を大テーマに、「万年筆、コーヒー、将棋、バードウォッチング、読書」にして文章を構成します。「私が好きなものは5つある。具体的には万年筆とコーヒー、将棋、バードウォッチング、読書である。まず万年筆の魅力は~。将棋の魅力は~、バードウォッチングの魅力は~、読書の魅力は~。以上、私が好きなものを紹介した。ぜひどれか一つでも手に取るなり試すなりしてほしい」みたいな感じになるでしょうか。最後にはまとめの文を挿入すると文が引き締まります。

このように書いていくと、文章はとても論理的にはなります。ただ、面白みにかけるかもしれません。事実や客観性を重視する論文やレポートは、これで十分でしょう。しかし、作文・エッセイではもう一工夫したいところです。この場合は、大テーマを工夫したほうが良さそうです。万年筆、コーヒー、将棋、バードウォッチング、読書の共通点を見つけ出し、それを大テーマにします。例えば、「静的ものの魅力」くらいでしょうか。もう少し工夫の余地はありますが、単に「好きなもの」よりはいくらか読み物っぽくはなったかもしれません。大テーマを設定する時は小テーマから共通点を見出します。他方、反対のアプローチで、大テーマを設定した上でそれに呼応する小テーマを見つける、ということもできます。

――以上、「テーマ」について、文章の書き方を紹介しました。いずれも非常に有用なテクニックで、すぐに使えるものばかりです。ぜひ実践してみてください。

スポンサーリンク
最新の記事はこちらから