万年筆はボールペンやシャープペンシルとは明らかに構造が異なります。手にした時、どのようにすれば字が書けるのか、本当にインクが出てくるのかと、ちょっと戸惑うかもしれません。インクの入れ方として、メジャーなものは、カートリッジとコンバーター、吸引式がありますが、複雑な作業は求められないので、どうぞご安心を。インクについては細かな説明は別途、解説するとにして(ぜひこちらを参照ください。初心者向けの内容です)、本稿では主に字を書くことにフォーカスを当てて解説いたします。せっかく万年筆を持ったのだから、万年筆ならでは書き味で書き進めたいと思うはず。以下の内容に目を通していただければ、万年筆で書くことがもっと楽しくなるはずです。
万年筆を紙に当てる角度は45度が目安です。
万年筆で字を書く時は基本的にはボールペンとほぼ同じ使い方ができます。ただ、「ほぼ」同じ使い方と言ったのはわけがあります。つまり、同じでないところもあるということです。
大きな相違点としてまず挙げられるのが、書く際のペンの角度、つまり、ペン先を紙に当てる角度です。万年筆を使う時はペン先を斜め45度にして書くのが
もっとも良いと言われています。なぜ45度が良いかというと、インクの出が良くなるからです。万年筆の先にペンポイントと呼ばれる部分があり、ここが紙などと接触することでインクが流れてくるのですが、角度が急すぎたり、寝かせすぎたりすると出が悪くなります。45度くらいが最適で、この角度だとインクがスラーと流れてくるわけです。
万年筆ならではの書き味を楽しみたいのなら、それならまずは45度を意識しましょう。45度と言っても分度器で測ることもできないので、「適度に斜め」という感覚が良いのではないかと思います。鉛筆の持ち方では、60度を推奨されるようなので、45度よりやや急でも問題ないでしょうし、そのほうが書きやすいかもしれません。難しく考えず、直角や極端に緩い角度でなければ、自分なりの使い方をしていても大丈夫なはずです。しばらく使っていると、万年筆が手に馴染んできます。それが万年筆の良さでもあります。
指の力を抜いて、筆圧は弱めに
万年筆は、ボールペンに比べると圧倒的にペン先は柔らかいです。このため、変に力を入れたら壊れてしまうような気もしますが、その点はご安心ください。柔らかいとは言っても、簡単に壊れるものではありません。それこそ、壊すつもりでペン先に力を入れない限りは、まず壊れることはないと思います。ボールペンだと、叩きつけるようにして書くペンの運びをする場合もありますが、おそらく、あの使い方もしていても、大丈夫だろうと思います。私自身、どちらかというと筆圧の強いほうでしたが、それでペン先がダメになったことはありません。
ただ、やっぱり万年筆ならではの書き味を味わいたいのなら、あまり力を入れず、流すような感覚で字を書くのが良いです。コツとしては、ボールペンを持つ時よりやや上の位置、ペン軸の中央よりやや下の部分を持ちます。この時、指にあまり力を入れないことが大事です。力を入れるとどうしても筆圧が強くなり、ガリガリと字を感覚に近くなります。指の力を抜けば、腕や肩も緩まります。試しに、指に力を入れた時と、力を抜いた時の違いを体感してみてください。指の力を抜いた状態で字を書くと、スラスラーと流すようにペン先を動かせるはずです。筆記具の持ち方としては、親指・人差し指・中指を使って、薬指と小指は添えるだけでいい、とアドバイスされることもあります。それが理想だとは思いますが、薬指と小指の力を抜くのは簡単なようでけっこう難しいです。持つ段階で時間をかけるのもややもったいない気もするので、
できる範囲で意識すると良いでしょう。
不思議なもので、柔らかいペン先を使っていたら、それに合わせて自分の筆圧も変わっていきます。スラスラーとペン先を運んだほうが速く書けますし、指や手首、肘への負担も少ないです。数行書いた程度ではあまり気づかないかもしれませんが、原稿用紙1枚分くらいの量を書いてみると、万年筆だと楽だなと感じるはずです。
いろいろと解説はしましたが、上記はあくまで基本です。万年筆はこうあらねばならないということはありません。自由な道具です。ぜひ気楽に使ってみてください。