【文章講座】読み手を意識して伝わる文章を書く(後編)

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どうすれば良い文章、伝わる文章が書けるのか。「読み手(読者)主体」をキーワードに、前編では読み手とは誰のことを指すか、読み手を明確することで文章がどのように変わるのかを紹介しました。後編では具体的にどのような文章を書いていけば良いか、さらに踏み込んで技法などを紹介します。

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良い文章、伝わる文章とはどんな文章を指すのか。

ここで、一度改めて良い文章、伝わる文章について考えてみたいと思います。どういう文章が良い文章で伝わる文章なのか、はっきりさせることで、目指すべき文章が見えてきます。この機会にぜひ理解を深めていただければと思います。

良い文章と伝わる文章はニアイコールです。良い文章と言われても少々ぼんやりとしていて正体をつかみにくいですが、伝わる文章と言われると、何となくどういう文章を言うのかはつかめると思います。つまり、書き手の主張が伝わる文章です。ここからわかるのは文章には主張がないといけない。伝えたいことをはっきりさせる必要がありますね。

過去にも何度か文章には主張が必要だと言及しました(こちらを参照ください)。主張を伝えることは非常に重要ですが、その上で、さらに一歩踏み込んでより良い文章を追求したいと思います。考えてみれば、主張を伝えること、伝わる文章を書くことは、目的ではありません。手段です。主張を伝えること、伝わる文章を書くことは、私たち書き手は何を成し遂げようとしているのでしょうか。それは「動かすこと」ではないでしょうか。

良い文章は人を動かす。

文章を読んでもらって、読み手が何らかのアクションを起こす。その前段として、共感し心を動かしてもらう。これこそが良い文章と私は捉えています。つまり、良い文章とは「人を動かす文章」ではないかと考えているのです。

例えば、「万年筆は素晴らしい」と主張する文章があったとします。「万年筆は素晴らしい」と伝える背景には、主張を通じ万年筆を使ってほしい、好きになってほしいとの思いが込められているはずです。万年筆の素晴らしさを知ってもらうのは第一義としても、好きになって手に取ってもらいたいとの思いは隠れているでしょう。同様に自然の大切さを伝える文章があったとして、自然が大切だと伝わったところで意味がないとまでは言いませんが、目的は半分だけ達成みたいなもので、自然を大切にする行動を起こしてもらうことで本当の意味で目的は達成されたと言えます。

一口に人を動かすといっても、その狙いには濃淡があります。文章を読んでもらってすぐに行動を起こしてほしいという切羽詰まったケースもあれば、少しずつ主張を理解してもらって、いずれ何らかの行動につながればいいということもあるでしょう。人を動かすというと、なんだか恣意的な気もしますが、あくまで共感の上に成り立つことです。伝わることの先にある大切なこととして捉えていただければと思います。

独りよがりに陥っていないか注意する。

もしかしたら、良い文章というと、文章にリズムをつけるとか、語彙の豊富な文章とか、そうしたことを想像したかもしれません。リズムや語彙も大切ですが、欠かせないのは読み手に求められているかどうかという視点です。リズムを整え語彙を豊かにすることが、読み手に伝わる、読み手を動かす、ということとつながっていると判断されるなら、積極的に考慮すべきです。しかし、あまりつながっていないのなら、それほど重視しなくてもいいでしょう。変なこだわりは独りよがりに陥りやすいので、この点は注意が必要です。

読み手にとって良い文章でなければいけないのに、自分(書き手)にとって良い文章になっているケースも少なからずあります。書き手の評価と読み手評価が大きく分離し、結局読まれない文章となってしまうのです。時に、せっかく文章の勉強をしているのに、枝葉末節なテクニックにばかり目が行き、誤った方向に進んでいるケースも見受けられます。

こういっては何ですが、伝わる文章、人を動かす文章は、必ずしも読みやすくなければならないということはないのです。多少ゴツゴツしていたり、素人臭さがあったりしたほうが、読み手の心に残るものです。逆に、非常にこなれた文章はサラサラ読める分、読み流されてしまい、何の印象にも残らずすぐに忘れ去られることはよくあります。文章の稚拙を気にし過ぎては文章が書けなくなります。読み手のことを考えて書けば、まず間違いはありません。自信を持って書き進めてください。

この点について、参考までにこちらもお読みいただければ幸いです。

文章の構成(流れ)を理解する。

読み手を主体とした文章を具体的に書く方法をお伝えします。「読み手」が明らかになれば、後は自然と文章は作られていきます。まずは文章の構成(流れ)に理解を深めてください。構成は文章の地図や道しるべみたいなものです。地図がなければ道に迷うのと同じように、構成がないと文章もあちこちに行きまとまりがなくなってしまいます。構成そのものはとても簡単なものです。この機会にしっかりと覚えてしまいましょう。

基本的な文章の流れは、こちらで紹介した「主張→理由→具体例→主張・未来の決意(まとめ)」です。「主張→理由→具体例→主張・未来の決意(まとめ)」は小論文の書き方を踏襲しています。小論文は「序論→本論→結論」で構成されます。序論で主張を書き、本論で理由・具体例を示し、結論でまとめます。まとめというとややぼんやりとしていて何を書いていいかわからないかもしれませんが、「主張を繰り返す」と捉えていただければ大丈夫です。序論と同じことを書くのですが、まったく同じことを書くのもやや締まりのない印象を与えてしまうので、未来に向けた決意で文章を締めくくることをお勧めしています。未来の決意を書くことで文章が引き締まり、読み手に力強さやさわやかさを感じ取ってもらえます。

なぜ「主張→理由→具体例→主張・未来の決意(まとめ)」が文章の構成する方法として推奨しているのかというと、読み手に取って読みやすく、書き手にとって書きやすいからです。ちょっと前にPREP法という書き方が注目され、わかりやすくかつ論理的な文章が書ける、などと言われていました。PREPは「Point(結論)」、「Reason(理由)」、「Example(実例・具体例)」、「Point(結論)」の頭文字になっているのですが、何のことはない「主張→理由→具体例→主張・未来の決意(まとめ)」または「序論→本論→結論」と同じですね。PREP法という文章術を初めて聞いた時は、伝わる文章を書くには小論文の書き方を知っていれば十分なのだと思ったものです。同時に小論文の書き方がまったく世の中に広まっていないことがわかりました。実際問題、小論文の書き方をしっかりと教えられ、勉強したという人は少ないでしょう。私自身、ライターの職に就いてから改めて勉強しました。

※「主張→理由→具体例→主張・未来の決意(まとめ)」はちょっと長いので、Fujikawa(管理人の名前)法などと称したいのですけど、この文章術そのものは先人が作ってきたものなので、自分のもののようにいうのは気が引けます。ということで、ちょっと長くなりますが「主張→理由→具体例→主張・未来の決意(まとめ)」と言い続けます。そのうちFujikawa法などと言い出すかもしれませんが、あくまで便宜を考えてのことです。

読み手が何を知りたがっているか思いを巡らす。

読み手が明確になり、文章の構成に理解が深まったら、もう半分書けたようなものです。構成に従って文字を書いていきます。この時のコツは常に頭の中に読み手を置いておくことです。読み手は何を知りたがっているか、これを書いたら次はこれを書くと理解しやすくなるだろう、と想像しながら書き進めます。どのような内容をどのような順番で伝えればいいか、書き始める前に整理しておくこともポイントです。

読み手を想定するかしないか、大きな差が出るのは「主張→理由→具体例→主張・未来の決意(まとめ)」の「具体例」の部分です(小論文で言えば「本論」、PREP法なら「Example」です)。具体例は全体でももっともボリュームのある部分となります。また、具体例をしっかりと書き込めるかで文章の持つ説得力が異なってきます。非常に大切な部分ですので、しっかりと書き込んでいきましょう。

書く時のコツは、文章を「塊」で考えることです。例えば、「万年筆は素晴らしい」という主張を「万年筆に興味を持っているが、詳しいことは知らない」読み手に伝えるケースを想定します。理由で「文字が書きやすいから」と示し、その具体例を書くとしましょう。「どのように書きやすいのか」「ボールペンなど他の筆記具と比較して何が違うのか」「実際に使ってみての感想」など「書きやすさ」の話を集中させます。他方、万年筆の素晴らしさの理由として、書きやすさのみならず、「デザイン」や「耐久性」についても触れたいとします。理由と具体例を追記しますが、その際、文章を読みやすくするコツは「書きやすさ」の話題を書ききってから次の話題に移ることです。「書きやすさ」「デザイン」「耐久性」の話題が入り混じったらとても読みにくくなってしまいます。「書きやすさ」なら書きやすさの話題を一つの塊と考えて、一カ所にまとめることを意識しましょう。これで読みやすさが随分変わってきます(こちらもぜひ参考にしていただければと思います)。具体的な書き方として以下の例を確認してください。

■万年筆は素晴らしい。その理由として第一に「書きやすさ」が挙げあれる。具体的には……。第二に「デザイン」。具体的には……。第三に「耐久性」。具体的には……。

■万年筆は素晴らしい。その理由として1「書きやすさ」、2「デザイン」、3「耐久性」が挙げられる。「書きやすさ」は具体的に……。「デザイン」は具体的に……。「耐久性」は具体的に……

※上記はあくまで一例です。書き方はもっと工夫の余地があります。

上の例では一つの文章として続けて書きましたが、章立てして見出しを付けながら書く方法もあります。このページがそうなっていますし、多くのネット記事が章立てと見出しを活用しています。また、上記は書き方の例として理由を3つ上げましたが、話題は過度に詰め込まないほうが良いでしょう。分量にもよりますが、書きやすさなら書きやすさでテーマを絞ります。デザインや耐久性も伝えたい場合は、別の文章を起こします。ただし、話題を追加する場合は読み手(読者)の知りたい情報と合致しているかを吟味します。今回の例では「万年筆に興味を持っているが、詳しいことは知らない」読み手を想定しています。「万年筆に興味を持っているが、詳しいことは知らない」読み手に何を伝えれば喜んでもらえるか、万年筆を手に取ってもらえるか、そうしたことを考えながら話題の取捨選択をしてください(こちらも参照)。読み手(読者)のことを考え、読み手が欲する情報を伝えられるようになったら、書き手としてはかなり上級です。プロを名乗ってもいいほどの腕前を持てるようになります。ぜひ前編・後編と一通り二通り読んで、読み手を意識した文章、人を動かす文章を書いてもらえればと思います。

まとめ

よく「この文章は訴えかけるものがある」というセリフを耳にしますが、小手先のテクニックを磨いたところで訴えかける文章は書けません。読み手に訴えかけ、読み手の心に迫るには、読み手のことを考える必要があります。読み手主体の文章を前編・後編に分けてお伝えしてきました。後編のポイントを以下に整理します。

・良い文章は、単に伝わることを超え、人を動かす力を持てる。
・常に読み手を考え、独りよがりに陥らない。
・読み手が知りたがっている内容を考え、どのような順番で伝えるかを整理する。
・書く時は「主張→理由→具体例→主張・未来の決意(まとめ)」の構成を活用する。
・文章を塊で捉え、一つの話題を書き切って次に移る。話題に行き来を避ける。

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