【万年筆】ポルシェデザイン P'3125 スリムライン
ポルシェデザイン P'3125 スリムライン

今回ご紹介したいのは、PORSCHE DESIGN(ポルシェデザイン=独=)の「P'3125 スリムライン」です。ポルシェデザインはその名前からわかる通り、自動車メーカー、ポルシェのグループ企業です。アパレル、ゴルフ用品、アクセサリー、帽子、時計、財布の販売などを行っています。創業は1972年にさかのぼり、(ポルシェの創業は1931年)、既に52年、半世紀上の歴史を重ねています。創業者のフェルディナント・ポルシェの孫で、ポルシェ・911のデザインに携わったフェルディナント・アレクサンダー・ポルシェ(F.A.ポルシェ)がデザイン事務所を興したことが起源。ポルシェらしい、洗練されかつ機能美あふれるデザインが特徴となっています。

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日本人にとってポルシェはハイクラスの象徴。

「ポルシェ」というと、日本人にとって特別な意味を持つと考えられます。高級車と聞いて真っ先に思い浮かべるのがポルシェではないでしょうか。実際、ある調査では「高級車と言えば」という問いに対して、ポルシェを上げる人が最も多い結果となっていました。他にも高級車はたくさんありますし、価格帯だけを見るとポルシェよりハイクラスなメーカーもあるでしょう。それでも日本人にとってはポルシェ。車に詳しくなくても、ポルシェは知っている。そうした存在と言えそうです。

少し余談ですが、ポルシェと同じく高級車メーカーのフェラーリのエンブレムは、馬をモチーフにしています。よく見ればかなり違うのですが、似てなくもありません(かなり違うとは思いますが、馬の形は似ています)。以前に、ポルシェを見てフェラーリだという人を見かけました。知らない人にとっては、それくらい似ていると言えば似ています。もしかしたら、その人はすべての高級車を「ポルシェ」と呼んでいるのかもしれません。

ポルシェ エンブレム
ポルシェ エンブレム 出典:pixabay
フェラーリ エンブレム
フェラーリ エンブレム 出典:pixabay

そのポルシェデザインですが、現在は万年筆を扱っていません。魅力的なデザインの万年筆が多かったのですが、万年筆のファンにもポルシェ車のファンにもあまり評価されなかったのか、あるいは採算が取れなかったのか。そのへんは不明ですが現状、ポルシェデザインの万年筆は手に入れにくい状況となっています。新品を入手するのは極めて困難。販売されているとしたら、中古ということになるでしょう。今回ご紹介するのも中古となります。

ポルシェデザインが万年筆から撤退したことについてはこちらでも少し触れています。

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ECサイトでたまたま発見する。

P'3125 スリムラインはECサイトで購入しました。購入を検討し始めた時は既にポルシェデザインは万年筆の生産をストップしていたため、中古を扱っているサイトを探すしか、ほとんど手がなかったのです。ただ、どのサイトででも「在庫なし」「sold out」と表示されています。発売が中止になったのだから、仕方ないよなと思い、ほとんど諦めていました。ところが、数年前にたままたP'3125 スリムラインが販売されているのを見つけました

正直、P'3125 スリムラインについては、詳しく知りませんでした。サイトに目を通すと、18金のペン先、デザインも洗練されています。反面、ポルシェデザインは鎖帷子を思わせる伸縮可能なワイヤーを身にまとったボディがメカニカルで格好良く、それこそが最大の特徴だと捉えていました。鎖帷子のようなボディは、車製造の技術を応用した「テックフレックス」と呼ばれる機構とのことですが、P'3125 スリムラインには用いられていないようです。ただ、これはこれで十分にイケテいる。購入を迷いました。ポルシェデザインの万年筆を次はいつ見つけられるかわかりません。また、中古ということもあって、18金のペン先にもかかわらず、かなりディスカウントされています。安い買い物ではありませんが、国産でもこの価格で18金の万年筆は売っていないだろう、というほどだったので、思い切って購入を決めました。

オンラインで購入の際は、詳細の確認を怠らずに。

結論からいうと、P'3125 スリムラインは買って良かったと思いました。メタリックなシルバーのボディが洗練された印象を与えます。ポルシェだという強い主張はないものの、キャップの天ビスに「pd」、キャップのクリップ部分に「PORSCHE DESIGN」と刻印があり、さりげないオシャレさを感じました。書き味も非常に良いです。中古なので新品時の書き味はわからないのですが、おそらく前の持ち主の使用頻度はそれほど高くなかったのでしょう。何の問題もなく書くことができます。

何より気に入ったのがキャップの構造です。クリップ部分が開閉式になっています。根本の部分を押すと開くのです。最近ではボールペンで開閉式のクリップが採用されることが多くなっていますが、万年筆ではほとんど見かけません。開閉式のため、厚手の洋服にも挟めます。冬場の厚手のジャケットは、内ポケット部分の生地も厚くなっていることが多いため、P'3125 スリムラインがとてもマッチします。また、システム手帳のペンホルダーにも対応できるのが、とても良かったです。

一方で、インターネットを利用したならでは問題もありました。問題と言いますか、正確には確認を怠った私のミスですが。もっともしまったと思ったのが、キャップが胴軸のお尻の部分に収まらないことです。直線的なデザインのため、キャップの太さが胴軸と同じ。胴尻に収まらないことは気づくべきでした。キャップの締まり具合も少し気になります。P'3125 スリムラインのキャップは引き抜くタイプの嵌合(かんごう)式なのですが、私が保有しているものは接合部分がいかにもすぐに外れそうです。これも新品の状態がわからないので、元からなのか少し破損してしまったのかは不明です。この点も事物を見ないで購入するオンラインならではの弊害と言えるかもしれません。しかし、中古品なのである程度の劣化は了承済みです。そもそも、代えてくれといっても代わりはありません。

P'3125 スリムラインとペリカンのインク
P'3125 スリムラインとペリカンのインク

また、インクは両用式となっていましたが、コンバーターもカートリッジも付属されていません。これも私の確認不足でした。説明書きではペリカンのコンバーターを利用となっていました。持ち合わせていなかったため、試しにウォーターマンのコンバーターを使ってみたところ、インクの吸引が可能でした。一つの発見ですが、正しい使い方ではないため、いつ不具合を起こすとも限りません。早々にペリカンのコンバーターを買い求めました。

悲しきP'3125 スリムライン。

繰り返しになりますが、P'3125 スリムラインは大変気に入っています。これも先述した通り、開閉式のクリップで厚手のジャケットの内ポケットにも挟めるため、特に冬場は愛用していました。加えて、システム手帳にちょうどいい万年筆を探しているところだったので、P'3125 スリムラインはベストな選択の一つだったわけです。

しかし、私の不注意からP'3125 スリムラインは本来の魅力を発揮できなくなってしまいました。なんてことをしてしまったのか。P'3125 スリムラインを見るたびにため息が出ます。自分の愚かしさに本当に気持ちが落ち込みます。私と同じような不注意を犯す人はそう相違ないかもしれませんが、万年筆を扱う上で気を付けるべき点の一つではあります。

次回、注意喚起と己への教訓の意味を込めて、万年筆を扱う時に避けるべきこと、ほとんど絶対にしてはいけないことについて解説します。

編集後記

欲しいと思っていた万年筆のブランドが、いつの間にかなくなることはあります。かといって、欲しいものを片っ端からコレクションするわけにもいかないので、なんとももどかしいところです。その意味で、製造・販売終了後にP'3125 スリムラインを見つけられたのは、運が良かったと言えます(それなのに、いかんともしがたい事態が起こってしまいました……)。万年筆は限定品が多い製品の一つだと考えられますので、万年筆との出会いは一期一会なのかもしれません。一期一会なのは万年筆に限ったことではないですけどね。なお、PORSCHE DESIGNのブランドは現在もあり、アパレル、ゴルフ用品、アクセサリーなどの製造・販売を続けています。

【仕様(本文中のもの)】
ペン先/18金
字幅/M
方式/両用式
サイズ/約144mm (収納時)、約125mm (筆記時)
重さ/約35g

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