万年筆の入門機は変わった。それでも金ペンを勧めたい理由

最近、万年筆の「入門機」の選択肢が、ますます広がっているように感じます。2026年10月には、KAYOU+から税込3,300円の万年筆「Leron」が登場しました。9月には、累計販売数33万本を突破したスケルトン万年筆「Fonte」シリーズから、税込1,848円の「Fonte HaluTone」が発売されています。

もちろん、安価な万年筆は以前からありました。ただ、最近は手頃な価格だけでなく、デザインや使いやすさにも工夫を凝らした製品が増え、万年筆を気軽に楽しめる環境が整ってきました。これは歓迎すべきことです。一方で、長年万年筆を使ってきた私には、少し複雑な気持ちもあります。というのも、私が万年筆に魅了されたきっかけは、決して「手軽さ」ではなかったからです。

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万年筆を好きにした、最初のプロフィット

初めて使った万年筆は、仕事の節目にもらったセーラーのプロフィットスタンダードでした。14金ペン先のMF(中細字)です。当時、万年筆に特別な興味があったわけではありません。これを機に集めようと思ったわけでもなく、もらったから使い始めた。それだけのことでした。

ところが、仕事でノートにメモを取るたびに、ボールペンとは違う書き味が気に入ってしまったのです。さらさらと文字が書ける。長い時間書いていても疲れにくい。それまで使っていた筆記具とは明らかに違う感覚でした。気がつけば3年間、その1本だけを使い続けていました。詳しくはこちら。

今になって振り返ると、私にとっての「入門機」は、価格が安いかどうかではありませんでした。万年筆で書く楽しさを教えてくれたかどうか。それが何より大きかったのです。

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書きやすさと、書く楽しさは同じではない

手頃な価格の万年筆にも、書きやすい製品はあります。カートリッジを差し込むだけで使え、気兼ねなく持ち歩ける。万年筆に触れるきっかけとして、こうした手軽さは大きな魅力です。

以前、1,000〜2,000円程度の万年筆を使ったことがあります。ローラーボールペンに少し近い印象を受けた記憶があります。とはいえ、実際の書き味は違いますし、筆記具として使いにくかったわけではありません。それでも金ペンを勧めたいのは、低価格帯の万年筆とは違った筆記感を知ってほしいからです。

紙に触れたときの感覚や、ペン先の弾力、さらさらと文字を書ける心地よさ。金ペンだから必ず柔らかく、滑らかに書けるわけではありませんが、私にとっては、その違いが万年筆を好きになるきっかけになりました。好き嫌いは別として、一度体験してみる価値はあると思います。

なお、万年筆は価格が高ければ金ペンとは限りません。海外製品を中心に、ステンレスペン先でも高価なモデルがあります。金ペンを試したいのであれば、価格だけで判断せず、ペン先の素材を確認したほうがよいでしょう。

今、最初の1本を選ぶなら

では、今、誰かに最初の万年筆を勧めるとしたら、何を選ぶか。今なら、プラチナ万年筆の「#3776 センチュリー」を候補に挙げます。国産の定番モデルの中では比較的手が届きやすい価格だったことに加え、カラーの選択肢が豊富なことが主な理由です。

金ペンにはほかにも魅力的なモデルがあります。例えば、ペリカンの「スーベレーン」もその一つです。書き味はもちろん、長く使いたくなるデザインも魅力です。ただ、もともと安価な万年筆ではなく、現在の価格を考えると、最初の1本としては少しハードルが高いかもしれません。

一方で、#3776 センチュリーを取り巻く状況も変わりました。プラチナ万年筆は2026年10月1日、定番モデルの一部について生産終了を発表しました。対象商品は在庫がなくなり次第、販売終了となります。後継商品の発売も予定されていますが、詳細は今後発表されるとのことです。

価格も以前とは大きく変わりました。今回、生産終了が発表されたモデルのメーカー公表価格は4万円台! かつてのように、気軽に購入できる金額ではなくなってしまったのです……。

#3776 センチュリーに限らず、金ペンの万年筆は以前より手が届きにくくなりました。初めての1本として勧めるにも、少々勇気のいる価格です。それでも、予算が許すなら最初から金ペンを選ぶことを勧めたい気持ちは変わりません。

40代からの万年筆には、少しの見栄があってもいい

学生や社会人になったばかりの人なら、まずは手頃な万年筆から始めるのも良いでしょう。一方、40代くらいになって、そろそろ万年筆を使ってみようかと思ったのであれば、金ペンを勧めます。

「仕事ができる風を装える」とまでは言いますが、ちょっとしたアクセントにはなるはずです。例えば、仕事で手帳を開いたとき、さりげなく万年筆を取り出す。あるいは、ジャケットの胸ポケットに万年筆を差しておく。それだけで、印象が変わる気がします。周囲の人が気づくかどうかはわからないですが、良い筆記具を持っているという満足感は味わえます。時計や靴と同じように、万年筆にも実用品を超えた楽しさがあるのではないでしょうか。

何より、金ペンの書き味を一度は知ってほしい。最初に選んだ万年筆が気に入れば、その1本を何年も使い続けることができます。入門機の選択肢が広がった今も、私が最初の1本に勧めたいのは、書く楽しさだけでなく、持つ喜びも感じられる万年筆です。

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