文章といえば「起承転結」を真っ先に思い浮かべると思います。文章は起承転結で書くものだ、くらいに考えられているのですが、一方、起承転結とはどんなものかをはっきり答えられる人は意外と少なと思います。まともに習ったことすらないのが普通でしょう。もしかしたら、確か「春眠暁を覚えず」で習った、という人がいるかもしれません。しかし、あれは漢文であって、日本語の文章の書き方とはやっぱり異なります。では、いったいどのように書けばいいのでしょうか。起承転結で文章を書く方法を「起」「承」「転」「結」に分解して解説します。
まず大前提として、起承転結は主に作文を書く時に用いる手法です。論文や意見分、あるいはレポート、報告書、稟議書などのビジネス文書全般には不向きですので、その点、お忘れなく。また、作文は「体験」を書きます。非常に重要なポイントです。ぜひこのことを念頭に置き、以下の解説をお読みいただければと思います。
「起」の書き方。
この部分で、いきなりメインの話を出してしまいます。おいしい場面を頭に持ってくるのです。唐突に語り出してもかまいません。むしろそのくらいの方がいいでしょう。というのも、この「起」の部分で作文の世界観を作らないといけないからです。読み手を一気に引き付けるのですね。文章の世界に引きずり込んでしまいます。
後の展開に興味を抱かせるような場面を描いて、読み手に「なんだ」「どうした」と思わせれば成功です。この点、定型文で書いてOKな「序論本論結論」型の小論文とは異なります。表現することが求められるのです。
書き出しの手法は心理描写、情景描写、会話など表現方法はさまざまありますが、どれがいいということはありません。逆にそれが難しいのですが、とにかく「起」では文章の世界観を作り、読み手を引きこむことを目指しましょう。それが達成できれば、どんなふうに書き出してもいいのです。文章量は全体の10%前後です(文章量は目安です。以下同じ)。
「承」の書き方。
「承」は「起」の話を受ける箇所です。「起」の解説をします。いつのことか、どこのことか、誰のことか、何のことかなどに触れていきます。「起」で唐突に始まった話について、「承」でやや落ち着いて場面解説をするのです。
読み手の疑問に答えるくらいの感覚で書きましょう。ただし、作文なので完全に解説になってはダメ。物語ることは忘れずに。場面の中の主人公になったつもりで書いていくといいでしょう。もともと作文には人柄を伝える役割がありますので、自然とそうなるとは思いますが。文章量は全体の5~10%です。
「転」書き方。
「転」は話を変える(転換する)こと、と言われています。それは間違いないのかもしれませんが、この部分を「しかし」や「でも」で始めなければいけないと思っているケースが見受けられます。
話を転換すると言っても、逆説を述べよと言っているのではありません。「転」は話を大きく広げる部分です。起承転結の「てん」は「展開」の「展」と考えた方がわかりやすいのではないしょうか。
「起」で作り上げた場面にもう一度戻り、さらに場面を展開します。「起」が予告編やハイライトだとしたら「転」は本編です。具体的な描写をして、読み手をさらに引き込んでいきましょう。「転」の部分では、具体的な体験を語り終えるようにします。文章量は全体の70~80%です。
「結」の書き方。
「結」は体験から離れ、自分の主張を語ります。「これまで描いてきた自分の体験から私はこんなことを考えるようになった。私はこんな人間だ。これからはこうしていきたい」というような感じにします。論理的に話を展開する小論文や意見文と違って、多少暑苦しく書いたほうが作文らしくなります。
ただ、あまり主張し過ぎると説教臭くなってしまうので避けましょう。せっかく「転」までで作った世界観が壊れてしまいます。本当は「結」がなくても、主張が伝わるほうが良い文章なのですが、そうそううまくは書けないし、やっぱり主張が伝わらないことには困るので、長くなり過ぎない程度に文章をまとめます。文章量は、全体の10%前後です。
――以上、「起」「承」「転」「結」の書き方を解説しました。実際に書く時は、「起」の部分ではこれ、「承」の部分ではこれ……というふうに、予め構想を練っておくことをおすすめします。必要に応じメモを取り、最終的にはそのメモを適切に並べ、つなぎ合わせるような感覚です。慣れれば頭の中でもできますが、最初のうちはなかなか困難です。書き出す前工程で時間をかけるのが、上達のコツです。ぜひ万年筆を手に取り、書いてみてください。
それでは、良き万年筆ライフを!