今回ご紹介したいのはアウロラ(イタリア)の大陸シリーズのアメリカです。アウロラは1919年にイタリアのトリノで創立されました。日本には1960年代に日本に紹介されています。当時は「オーロラ」と表記されていたとのこと。少しややこしいのですが、アウロラは「黎明」という意味で空に見られるオーロラとは関係ありません。現在はアウロラで統一されています。
イタリアの万年筆メーカーというところから想像がつくように、アウロラはデザイン性に優れ、多くの愛好家の支持を受けています。中でも「アウロロイド」という独自の樹脂を使った製品は人気を集め、特に「オプティマ」シリーズは著名です。
有名デザイナーと協業で生み出されたものも多く、その中の一つ1970年に発売された「アスティル」はシリンダータイプのデザインの先駆けとなり、世界で注目されました。筆記具で初めてニューヨーク近代美術館(MoMA)のコレクションとなっています。現在でも万年筆でコレクションとなっているのは、アスティルのみです。
また、ペン先からボディに至るまで一貫して自社工場で生産する、万年筆業界の数少ない「マニュファクチュール」メーカーの一つとしても知られています。アウロラの万年筆はイタリアのトリノで企画され、トリノの工場で作られているのでした。
もしかしたら、アウロラはあまり聞いたことがないと感じたかもしれません。知名度としては、万年筆に興味があればほぼ間違いなく知っているけれども、万年筆にあまり興味がなければほぼ聞いたことがない。いわゆる知っている人は知っている、というメーカーでしょうか。日本国内では、セーラー、パイロット、プラチナ、モンブラン、ペリカン、パーカーほどの知名度はないでしょう。ただ、万年筆の一流メーカーであることは間違いありません。
世界で7500本の限定品
アウロラをはじめ、万年筆メーカーは多くの限定品を出しており、書く楽しみに加え、コレクションする楽しみも、愛好家に与えてくれます。アウロラの「アメリカ」もそうした限定品の一つです。アウロラは2003年に大陸シリーズと銘打って、アフリカ、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、オセアニアの順にそれぞれの大陸をモチーフにした限定品を送り出しており、アメリカは大陸シリーズの第四弾というわけです。
アメリカが世に送り出されたのは2011年。なんと世界でたった7500本しかなく、一本一本にシリアルナンバーが刻印されています。イタリアのメーカーが7500本限定で出した製品をどうやって手に入れるのか、しかも日本で、と思ったことでしょう。私自身も日本では手に入らないもので、よほどのコレクターが現地に買い付けにでもいくのだろうと思ったものです。
ただ、日本は有力なマーケットの一つとなっており、かなりの本数が輸入されているのではないかと推測できます。非常にありがいたいことに(ある意味で悩ましいことに)日本では海外メーカーの限定品だからと言って、決して手に入らないということはないようです。通常の製品よりは入手は難しいと思われますが、イメージするよりは簡単に見つけられます。実はこのアメリカも発売後、数年が経ってからたまたま店舗で見つけて購入しました。正直、「簡単すぎる」とも思いましたが、手に入ったのは素直にうれしかったです。
こうした状況を総合的に考えると、日本を含め世界にも購入希望者がそれほど多くないと言えるのかもしれません。事実、限定品は各メーカーが毎年、必ず何かしらを出してきますから、一般のユーザーはその全部を買いそろえることはほぼ不可能です。必然的に限定品の中かから、どうしても欲しいものが出た時にだけ購入することになり、結果として、一気に売り切れることはないのだと思われます。
これが良いのか悪いのか、少々不明ですが、万年筆の限定品は想像以上に手に入りやすいのは間違いありません。ただし、どれもそこそこの値段のするものばかりで、かつ各メーカーさまざまなシリーズがあるので、厳選して購入しないと財布の中身がとんでもないことになってしまうと、忠告はしておかねばならないでしょう。
アメリカの歴史に思いを馳せる逸品
アメリカのデザインに目を転じると、全体を星条旗を彷彿させる赤と青で彩り、明るさを抑えた色調は落ち着いた雰囲気を漂わせています。光を当てる角度によって光沢に輝き、さすがデザインのアウロラと言えます。細長のペン先はとてもスタイリッシュで、キャップをペン軸に差した時のフォルムは何とも言えず美しいです。
キャップには、コンドル、サボテン、幌馬車、アメリカ先住民(ネイティブ・アメリカン、インディアン)、スパイダー(おそらく)が刻印されています。ご存知のように、アメリカ大陸は1492年にコロンブスによって発見されました。キャップはそんなアメリカの歴史を思わせます。よく見るとクリップにはアメリカ大陸の模様が彫らており、どこまでもアメリカの香り漂う逸品となっています。
文字の太さはFを選択しました。実際に書いてみると、適度な硬さと滑らかさがあります。日本語を書くにもちょうど良く、ペンが気持ちよく走ってくれます。アウロラはデザインのみならず、機能の面でも高く評価を受けています。実際に字を書いてみると、そのことが実感できるのではないでしょうか。
アウロラは非常に好きなメーカーです。中でも、アメリカはデザインも書き味もとても気に入っています。大陸シリーズは全部そろえようともちらりと思いましたが、そんな余裕はなく……苦笑、他に欲しいものもあり断念したのですが、アウロラの別の限定品なら手元にあります。別途ご紹介させていただきます。