【エッセイ】秋の瞬間。

夕方6時を過ぎれば、虫の声が聞こえてくる。
耳を澄ますと、人の声、足音、物と物とがぶつかる音が混じって聞こえる。
なんと心地いいのだろう。
今私はとても豊かな時間を過ごしている。

目を閉じると、これまでの、
ここまで来た道がふと思い出され、
自分が思っている以上に、
恵まれた幸せな人生を歩んでいる。

今この瞬間がうれしくて仕方がない。
ただ、この瞬間は一瞬たりとも留められない。
そして、多分、この先は、この瞬間より
より豊かで幸せな時間が訪れると信じている。

だから、この瞬間も記しておこう。
さっと紙に書き残しておこう。
読み返してみて、今この時の気持ちを
自分だけがわかればよい。

留めておきたい風景がある。
人は思いながら綴りながら暮らしている。
生活とともに万年筆。

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