万年筆の価格が高騰しています。
万年筆と手帳

万年筆の価格上昇が止まらなくなっています。ここ数年でかつての1.5~2倍になってしましました。もともと高級筆記具ではあったのですが、下手をすると、手が出せない高級品になってしまいそうな勢いです。万年筆に何が起こっているのか探ってみました。
※本記事にはプロモーションを含みます。

スポンサーリンク

万年筆の価格がここ数年で1.5~2倍に上昇。

久しぶりに丸の内「丸善」の万年筆売場に足を運んでみました。モンブラン、ペリカン、パーカーなどの輸入品、パイロット、セーラー、プラチナなどの万年筆を眺めながら、否が応でも気づいてしまうのが、価格の上昇です。自分の持っている感覚と大いにズレがあるのですね。例えば、スーベレーンM800は5万円台だったはずなのに、目の前には8万円台の表示。なんと3万円も値上がりしています。一昨年に1万5000円くらいで買ったはずのプラチナのセンチュリーは2万台になっていました。万年筆が高くなっていることは把握していましたが、想像以上の高値になっていることに衝撃を受けました。

丸善のショーケースに並べられたペリカン・スーベレーン
ショーケースに並べられたペリカン スーベレーン

輸入品も国産品も例外なく値上げされています。売場の方によると「定価1万円だった万年筆が2万円になっている例もあります。ここ最近は年に1回にとどまらず、2回値上げされるケースも多くあります」とのこと。パイロットは他のメーカーが相次いで値上げする中、唯一価格を維持していましたが、昨年についに値上げに踏み切ったそうです。「ここ1~2年で急激に価格が上昇しました。前回のご来店から間を空けて万年筆売場に足を運んでくださった方は、多くの場合びっくりされます」と言っていましたが、私も本当に驚きました。

万年筆は高級筆記具とはいえ、まったく手が出せないものではありませんでした。どちらかというと、少し背伸びして良いものを買う、という感覚で、特に国産の万年筆は1万円前後で一生使えるようなものも買えたのです。それが今は2万円は必要になり、輸入品に至ってはどれも簡単には手が出せない価格になっています。値上げする前の価格を知っていることもあって、新たな購入には二の足を踏んでしまいます。「お客様の予算に合わないことが多くなりました。安易におすすめできない品物になっている感があります」と少し寂しそうな表情で話す店員さんが印象に残ります。

スポンサーリンク

値上がりの主な原因は金と物流コストの高騰。

値が上がりの要因は、売り場の方によれば主に2つです。1つは金の価格の上昇。金は2024年はなんと1万円超(3月時点)で取引されています。10年前と比較して倍以上になってます。さらに20年前と比較するとおよそ10倍です。万年筆のペン先は金で作られていますので、金の価格がこれだけ上昇して、万年筆の値付けに影響しないわけがありません。

実は金は20~30年前はそれほど高価なものではありませんでした。高価なものではないというとやや御幣がありますが、価格に関しては今の10分の1強だったのです。このため、金のペン先の万年筆もけっこう気楽に売られていました。低価格帯のものだと、ショーケースに飾られることもなく、ボールペンやシャープペンシルと同じように四角いペン立ての中に入れられていたと記憶しています。価格は2000~5000円だったかな。それでも、ペン先は14金だったりします。

同じ14金のセンチュリー3776が2万円代ということを考慮すると、隔世の感があるでしょう。こういう状況だったので、金が高いものという感覚がない人は少なくありません。つい最近、買取り店のスタッフの方と話す機会があったのですが、「古い金のネックレスに高い買取価格が付き、驚く方が多い」と話していました。ついでに万年筆のことを尋ねてみると、「万年筆そのものに価値がなくても、ペン先が金なら価格が付くことがあります。1グラム1万円ですからね」とのこと。ちなみに、万年筆を売りにいったのではないので、誤解なきよう。別件の取材での話です。

丸善のショーケースに並べられたプラチナ万年筆、センチュリー3776
ショーケースに並べられたプラチナ万年筆

もう一つの要因は物流コストです。燃料費(ガソリン代など)が上がっていますので、これも納得のいく話でしょう。燃料に限らず、人件費や在庫管理費、包装費なども上がっているので、価格が上がらないわけがありませんね。売場の方は円安の影響も指摘していました。金や物流コスト、物価などの高騰と円安、輸入品は価格上昇が自然ですらあります。国産の万年筆も、材料は輸入品に頼っているケースも多いので、どう考えても高くなるわけです。売場の方は先のことはわからないけど、と前置きした上で「今後、万年筆の値段が下がることはないように思います」と話していました。物価高は続いていますし、一部では大幅な賃上げも実施されるようになりました。そうしたことを考えると、「万年筆の値段は下がらない」という予想は納得のいくことです。

今は万年筆の買い時なのか?

万年筆が値上げされ、今後も下がることはないとすると、価格はますます上がることが考えられるわけです。そうしたことを鑑みると、「欲しい万年筆は今のうちに勝っておいたほうが良い」となります。ただ、物価高が続き賃金が上昇し、さらに日経平均株価がバブル期を超えたとしても、一般的な生活者の感覚で言えば、今は好景気でも何でもありません。むしろ逆の感覚を持っていることが多いのではないでしょうか。

要するに、仮に買い時だとしてもおいそれと簡単には買うことはできない。とはいえ、さっさと買っておけば良かったと後悔しても仕方がない。最善の策としては、欲しいものを慎重に選ぶ、という当たり前の結論になるでしょう。迷っているうちにまた価格が上がるとも考えられますが、値上がりの場合は予告されることが多いですので、定期的にチェックしておくことが大事かもしれません。値上がりにつられて買うという事態が発生しそうですが、それも一つのきっかけと見なしても良いのではないでしょうか。

また、オンラインショップの活用も考えられます。多くの場合、1~2割引きとなっていますので、実店舗よりはリーズナブルに買えます。ただし、思っていたのと違った、実際に使ってみたら書き味があまり好きになれない、などのリスクはあります。安さだけを求めるのなら、中古での購入もありだと思います。ただし、オンラインで中古品を求める場合は、デザインや使い勝手以外にも品質そのもののリスクもあるので、そのへんも加味しなければならないでしょう。あくまで個人的な意見としては、初めの1本なら多少高くても、専門の販売スタッフのいる実店舗を利用する。2本目以降で多少のリスクを飲み込めるのなら、信頼できるオンラインショップを利用する。これもあくまでも個人的な意見ですが、ネット通販ならペンハウス、中古品を求めるのならキングダムノート(ネットも実店舗もあり)をお勧めします。

編集後記

以上、見てきたように万年筆の価格が上がっています。主な要因は、金の価格や物流コストの高騰です。その他、そもそも物価高が続いています。今後、万年筆の価格が元に戻る、つまり、安くなることはあまり期待できないでしょう。逆に高くなることはあり得ます。すると、将来に向かっては今が一番、万年筆の安い時である意味買い時です。しかし、2~3年前と比較して価格が倍になった万年筆もあり、簡単には手が出せません。物価高に賃金上昇のスピードが追い付いていないからです。今後、欲しい万年筆をこれまで以上に慎重に選ぶ必要が出てきました。リーズナブルな価格を求めるのなら、ネット通販や中古品の購入も視野に入れても良いかもしれません。いずれにせよ、良い万年筆を手にして、素晴らしい万年筆ライフを送っていただければと思います。

スポンサーリンク

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事