今回ご紹介したいのはアウロラ(イタリア)の限定品、ルナです。アウロラの万年筆については以前にも大陸シリーズのアメリカを紹介させていただきました。その時に、メーカーのことも詳しくお伝えしておりますので、ざっと概要をご紹介するにとどめます。アウロラは1919年にイタリアのトリノで創立されたメーカーで、「アウロロイド」と呼ばれる独自の樹脂を使い、非常にデザイン性の高い万年筆を世に送り出しています。アウロラはオーロラと誤解されることも多いとのことですが、「黎明」という意味です。印象的な限定品を扱うことでも知られ、ファンも多くいます。私もその一人で、定番品を手にする前に限定品を2つ買ってしまったのでした。
透明感のある白が印象的。
ルナ(月)はその名の通り、月をモチーフにした一品です。発売されたのは2009年で、人類が初めて月面に降り立って(いわゆるアポロ計画)から40周年の節目でした。節目を記念していたのと同時に、アウロラは同年までに「ソーレ(太陽)」、「フオーコ(炎)」と自然に由来する限定品を出しており、ルナはそれに続く位置づけでもありました。
ルナを目にして印象的なのが、透明感のある白です。キャップと胴軸にはホワイト・マーブル・レジン(樹脂)が使用され、黒の斑点と大理石模様の濃淡のある色合いは月の神秘さを思わせます。見るものを魅了し引き付ける色合いと言えるでしょう。
限定品ですので、キャップの上部にはナンバーが刻印されています。私が使っているのはNo.081。世界で750本の限定生産の中の1本ということで、とても貴重で希少性が高いのも間違いありません。ただ、丸善や伊東屋で並んで買ったということなく、展示されているのを見つけて、さんざん悩んだ挙句に(お高いので……)購入を決めました。しかも、発売して数年経っており、このことから、発売と同時に売り切れるものではないと推察できます。アメリカを紹介した時にも少し触れましたが、限定品だからと言って必ずしも手に入りにくいわけではないのかもしれませんね。
なお、ボールペンのルナも同時に発売されており、生産本数は999。やはりユーザーはボールペンのほうが万年筆より多いようです。それぞれのユーザー数を考慮すれば、当たり前とも言えますが。
インクを入れると、インクがほのかに透けて見える。
透明感のある白が印象に残るルナですが、透明と言ってもスケルトンではありません。乳白色に近いですが、もっと透明感があります。実際、インクを注入すると、インクが透けて見えます。インクの色味がほんのりとわかるんですね。こうしたところも、ルナの持つ神秘性をより強調しているでしょう。
書き味もとても良いです。紙の上をペン先が滑るように走っていく感覚が味わえます。ペン先はMを選択しました。海外メーカーのMは日本語を書くにはやや太めなのですが、それほど使いにくさは感じません。画数の多い漢字を小さめのスペースに書くとやや潰れますが、そこは了解済みです。万年筆を使う時は大きく字を書きたいという欲求があり、だからこそMにしたので、むしろ程よい大きさがあると感じています。
話はややそれますが、字の太さを選ぶ際は基本的に国産をM、輸入品をFにしています。しかし、これだと国産のM、輸入品のFばかりになってしまいますので時折、国産でF、輸入品でMにするのです。万年筆の字の太さはMとFばかりではないですが、Mより太い、Fより細いとなると使う場面が限られてくるので、今のところF~Mに集中しています。
大きさは好みの分かれるところかも。
魅力たっぷりなルナですが、強いて欠点を挙げるとすれば大きさになるでしょうか。ルナの大きさはキャップを閉じた状態で約12センチ、キャップを胴軸に指した状態で14センチメートルになります。ペリカンのスーベレーンM800はキャップを閉じた状態でも14センチメートルを超え、ルナより少し大きいです。ルナは、キャップを胴軸に指した状態ではそれほどでもありませんが、キャップを閉じたままだとなんか小さいなと思わなくもありません。
ただ、大きい小さいは好みの問題がありますし、私のように男性で手がゴツイタイプが使うとやや違和感を覚えるかもしれませんが、手の小さい人にとってはピッタリとはまりとても美しく見えるでしょう。もちろん、手のゴツイ人が使ってダメかというとそんなことないので(実際私自身も使っていますし)、やはり好みの問題と言えます。
白を基調にした万年筆の数は、他の色に比べると、それほど多くはないと思います。その観点からも、ルナは貴重な存在と言えるのではないでしょうか。今回この記事を通じ、改めてルナの良さを確認することができました。ここまでお読みいただき、感謝申し上げます!
【仕様(本文中のもの)】
ペン先/18金
字幅/M
方式/吸入式