万年筆を使っていると、インクの出が今一つ良くないと感じる時があります。今回は故障かなと思った時の対処法とメンテナンスについて解説いたします。
まずはインクが切れていないかチェック
万年筆はなんとなく故障しやすいイメージがあるかもしれませんが、それほど簡単には故障しません。ペン先を極端に強い力で硬いものに押し付けるなどした場合は別ですが、そうしたことをせず、常識的な使い方をしている限りは、不具合は出ないと思ってもらって大丈夫です。
従って、インクの出が今一つ良くないと感じた時は、単にインクが切れてきたのだということをまずは想定してもらえればと思います。気づかないうちにインクが切れていることはよくあります。カートリッジやコンバーターを確認すると、側面にインクがついており、まだ十分に残っているように見える時でも、中身は少なくなっていることも少なくありません。ボールペンでも同じようなことがあるのではないでしょうか。
インクが少ない状態ですと、書けたり書けなかったりする時があるので、不具合を疑いたくなります。しかし、多くの場合はカートリッジを変えるかインクを補充するかすれば問題は解決します。安心して万年筆を使い続けていただければと思います。
万年筆のインクは、実は想像以上に減るのが速いです。また、しばらく使っていないと水分が蒸発することもあります。インク漏れが起こっていることも、基本的にはほとんどないので、これもまた安心していただければと思います。
ペン先を洗浄する
カートリッジを取り換えた、またはインクを補充したのに、まだインクの出が悪い、という場合は、ペン先でインクが固まって詰まっていることが想定されます。この場合、故障とまではいきませんが、メンテナンスは必要です。これは、長時間使っていなかった時などに起きやすい現象です。このため、万年筆は使うことが最良のメンテナンスと言われます。
とはいえ、メンテナンスの方法は簡単です。水道水で水洗いします。その後、コップなどの容器に水をため、1日程度つけ置きします。適当な容器がない場合は、ペットボトルを半分に切ったものでもかまいません。
ただ、カートリッジを使っている場合は上記の方法で済みますが、コンバーターと吸引式は、インクタンク(インクをためているところ)を洗浄する必要があります。これがやや面倒な側面があります。インクタンクを洗浄する具体的な方法は、水をためた容器から水を吸い上げて排出するの繰り返しです。
万年筆は構造上、分解して内部を洗うことはできません(分解できそうだと思っても、分解はさけてください)。このため、一気に洗い流しなどができず、インクタンクの洗浄にはやや時間がかかるというわけです。また、こうしたこともあり、万年筆を初めて持つ方には、カートリッジでの使用をおすすめしています。
洗浄メンテナンスは定期的に行ったほうがいいでしょう。メーカーなどでは1カ月に1回を推奨していますが、それほど頻繁に行わなくてもいいと思います。2~3カ月に1回で十分ではないでしょうか。それくらい使っていれば、そろそろインクの色を変えようかとも思えてきます。インクタンクの洗浄を別の色を試してみる機会とすると、メンテナンスにも楽しみが生まるでしょう。
どうしても直らない時は、文房具店へ
洗浄を行い、それでもなおインクの出が良くない状態が続いたら、何らかの故障と考えられます。文房具店へ持っていきましょう。店舗の大小は問いませんが、万年筆を扱っていることが前提です。購入した店舗でなくてもかまいません。どこでも大丈夫です。
万年筆の専門コーナーがあるような大きめの店舗ですと、万年筆の専門スタッフが在籍していますので、故障の具合が軽ければその場で直してくれると思います(多くの場合、サービスでやってもらえます)。例えば、ペン先の割れ目のところに薄い紙を指し込み、汚れを除去する程度で、インクの出がよくなることがあるようです。
故障の具合が大きいと判断された場合は、メーカーでの修理となります。場合によってはペン先の交換となり、数週間ほど預けることになりますが、確実に直りはします。万年筆が復活するのを心待ちにしていてください。