万年筆の「インク沼」への誘い②(自分に合った色の見つけ方)

インクは万年筆を楽しむ上で、重要なアイテムの一つです。近年特に人気を集め、各メーカーからたくさんの色が出されました。今や1000色ほどはあるのではないでしょうか。万年筆ライフをより豊かにするものとしての認知も広まり、たびたび雑誌などで特集されています。今回はこのインクについて、万年筆との関係や種類、選び方など、その楽しみ全般について、前編・後編の2回にわたって紹介していたいと思います。前編ではインクと万年筆の関係、種類など、主に機能について解説しました。今回、後編では色の選び方などについて紹介していきます。

スポンサーリンク

どの色を選ぶのがいいのか

定番の色はブラック、ブルーブラック、ブルーです。どのメーカーからも出されていますし、ビジネスシーンでも問題なく使えます。まずはこの3色を選んでおけば間違いありません。しかしながら、仕事で使う予定がなければ、これはもうまったくの好みで、好きな色を選んでいいのではないでしょうか。

インクの色の種類は年々増えています。これほどまでに増えたきっかけは2007年にパイロットが「iroshizuku-色彩雫」というインクのシリーズを発売したことにあると言われています。雑誌を見たり、店頭に足を運んだりしながら、豊富な色から自身のお気に入りを見つけるのは、それそのものが非常に楽しい行為です。

とはいえ、あまりに種類が多すぎて選べない、となるかもしれません。そうした場合は、どの系統の色を最初に手元に置いておくか決めるのが良いと思います。例えば、私の場合は、仕事で使うことを想定してこともあり、まずは青系(ブルーブラック)のインクを手にしました。前述の通り、ブルーブラックは各メーカーで出されており、セーラー、パイロット、プラチナ、ウォーターマン、モンブラン、アウロラ、ペリカンなどを使ってみました。その後、黒系、赤系、緑系を試しています。軸となる色を定め(私の場合はブルーブラック)、あとは用途や気分に応じて、広げていくという感じですね。

スポンサーリンク

ボトルインクの値段は?

ボトルインクは一つ1000~2000円台が多く、わりといい値段で販売されています。中には、4000円台のものもあります(その分、量が多いわけではありません)。一つで数カ月もち、総合的に考えればインクカートリッジより費用対効果は良いのですが、この価格帯をそろえるのは簡単なことではないでしょう。こうしたこともあり、まずは好きな色の系統に絞り、数色試してみるのがいいと思います。好きな系統の色であれば、なんか違う、失敗だ、と感じることはないはずです。どのメーカーのものを買っても、きっと正解です。あとはメーカーによる違いを味わいながら、自分の好みと合致するものを探すのも楽しいのではないでしょうか。もちろん、最初に手にしたインクが自分にとって一番いい色となることも十分にあり得ます。

また、ボトルインクは上記の通り軒並み1000円を超えますが、こうした中にあり、パイロットは定価400円(+税)でブラック、ブルーブラック、ブラック、レッドを販売しています。非常にリーズナブルで実用に優れています。まずはパイロットから入ってみるのも一つの手です。なお、顔料インクは全体にやや高めの傾向があります。このほか、非万年筆メーカーで、インクのみを製造しているところもあります。そうしたところのインクを使ってみるのも面白いと思います。

そして、これはまったく個人的な話ですが、私はブルー系にしぼりいくつか試した結果、ウォーターマンの色に引かれました。ウォーターマンは青系を「ミステリアスブルー」「セレニティブルー」「インスパイアブルー」と3色出しており、中でも、インスパイアブルーがとても気に入っています。でも、さまざまなメーカーのものを試してみたいとの思いから、インスパイアブルーをリピートせずに他のメーカーの青系を買っています。実際に今、手元にはインスパイアブルーはありません(笑)

さらに、もう一つ余談ですが、インクのボトルは各メーカーで形が異なっており、インテリアとして飾っても良いような趣があります。などと言いながら、私はどちらかというと物は捨てるほうなので、これまで使用済みになったものはすべて廃棄しました。どんなに少なく見積もっても10瓶はあります。今になって考えると、とてももったいないことをしたように思えてきます(苦笑)

つけペンの感覚で色を試してみる

万年筆は内部にインクを格納する仕組みのため、一度補充すると、使い切るまで別の色を試すことはできません。万年筆はインクの減りが速いとはいっても、B5の大学を、肌感覚では15シート分は書き切れるくらいの量を貯めることができます。すると、せっかく数種類の色を手に入れても、使う機会がなかなか巡ってこないことになります。ましてボトルインクを1本分まるまる使い切ってから次のを使うことにしていたら、数カ月は同じ色のままです。これも楽しみ方の一つですが、せっかくいろんな色を手に入れたことだし、もっと早いサイクルで色を楽しみたい、と思うのも人情です。

解決策としては、使いたい色の分だけ万年筆をそろえる方法があります。ただ、これは経済的負担がかなり大きいです。また、メンテナンスも大変になります。万年筆はインクを補充した状態で放っておくと、不具合を起こす可能性が高くなります。使うことがすなわちメンテナンスなのですが、2~3本の万年筆を使い回すことはできるにしても、それ以上となると相当の時間とマメさを要求されます。経済的負担よりこちらのほうが大きいかもしれません。

そこで、提案したい手法としては、万年筆をつけペンのように使ってみることです。つけペンは、文字通りペン先をインクにつけて使います。毛筆に墨汁をつける感覚です。万年筆の良さが半減されてしまいますが、これですと、少しずついろいろな色を試すことができます。万年筆一本で数色を試す場合は、色を変えるごとにペン先を水洗いするなど、面倒くささは残ります。それでも、万年筆の内部を洗浄するのに比べるとはるかに楽です。つけペン感覚で使って、「しばらくはこの色でいこう」というのが見つかったら、改めてインクを補充するのもいいのではないでしょうか。

インクは万年筆を使う楽しさをより広げてくれます。「こんな色で字を書くことができるんだ」と、あたかも常識を打ち破るような、一種の爽快感を覚えるかもしれません。重厚な見た目の万年筆で鮮やかな色の線を描き、その見た目のギャップを味わうこともできます。今回はこの色、次回はこの色で、と考えることもまた非常に楽しいものです。万年筆にはインクという楽しみもあります。ぜひ味わってほしいと思います。

スポンサーリンク

Twitterでフォローしよう

おすすめの記事