【文章講座】文章の上達には時間がかかる。その理由とは

文章は必ず上達します。この前提に基づき、それでもなぜ上達が難しいのか、あるいは時間がかかるのか。その理由を解説すると共に、可能な限り最短距離で上達する具体的な策をお伝えしたいと思います。

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1. 練習しづらい。

文章の上達を阻む、最大にしてもしかたらほとんど唯一の理由として、「練習しづらい」ことが挙げられます。どんな物事も練習しないことにはうまくなりません。英語や数学はもちろん、運動の分野でも、繰り返し練習して体にしみ込ませ「体得」することが求められます。小学生のころに、計算の基礎力をつけるため、問題を1日10問20問と解いたのを覚えている人も多いでしょう。10問20問では少ないくらいで、中には1日100問200問と解いた人もいるはずです。

一方、文章の場合はどうか。1日たったの1問(題)でもかなり重い課題となります。それどころか、1日1題は取り組む課題の量としては非現実的です。相当気合を入れて、1週間1題に挑戦するのがやっとではないでしょうか。1回1回にある程度の分量が要求され、時間がかかります。さらに800字(原稿用紙2枚分)なら800字、書ききって初めて1回練習したことになります。途中で書くのをやめてしまったら、練習の効果は薄いと言わざるを得ません。

また、文章は分解しての練習がしづらいという特徴もあります。つまり、一文一文を別々に練習しても、まとまった文章を書くための効果的な練習と言えるかは疑問ということです。文章は前後のつながりを見て組み立てていく側面があり、その点が練習のポイントともなります。

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2. 目的があいまい。

一口に文章といっても、種類は豊富です。作文、論文、エッセイ、小説、新聞記事、広告文(コピー)、レポート、報告書、議事録などさまざまです。その中で、どの文章を目指すのか。この点をあいまいにしたままやみくもに書く練習をしても効果は薄いです。

それどころか、逆効果になる可能性もあります。例えば、ビジネス文書を書かなくてはいけなのに、作文の練習をしたとします。ビジネス文書は論理的にあまり感情をさしはさまずに書くことが求められます。一方、作文の構成に用いられる起承転結はやや非論理的で、また抒情的に書くことも求められます。作文のノリでビジネス文書を書くのは見当違いです。高い確率で書き直しを命じられるでしょう。

ビジネス文書を書く必要があるのに、作文の練習をしてしまったのは、おそらく文章力全般の力を身につけたくて、とりあえず作文を選んだのだと推測します。ただ、文章力全般というのは曲者です。どんな文章にでも通用する基礎力は基本的な文法力などが想定されますが、それは全体のほんの一部です。作文の書き方講座の類では、作文の構成や作文に求められる考え方を学ぶのがメインなので、ビジネス文書を書く能力はほとんど養われません。どんな文章を書く力を身につけたいのか。それをはっきりさせる必要があります。

3. 読んでもらう必要がある。

文章は読まれるためのものです。最終的に誰かに読んでもらわないことには良し悪しの判断はできません。書きっぱなしでは独りよがりになり、せっかく練習しているのに効果が薄いということも起こり得ます。これが何とも悩ましいところです。

身近に親しい人や家族がいる場合は、その人に読んでもらうのが良いと思います。読まれることそのものに意味があるので、誰に読んでもらってもいいのです。10代に向けた書いた文章を30代の知人に読んでもらっても大丈夫です。その際は、「10代の人に向けて書いた」と一言添えれば、そのつもりで読んでくれるものです。

ただし、重大な注意点があります。それは、相手からの指摘を素直に受け止めることです。不思議なもので、自分の書いた文章に関して何らかの指摘を受けると、非常に腹立たしくなります。多くの場合、批判を受けたような気持ちになり、「それはこういうつもりで書いた」と反論をするでしょう。しかし、いちいち反論をしていたら読んでもらう意味がないし、いずれ読んでくれなくなります。一方で、指摘が必ずしも正しいとは限りません。指摘を受け止めながらも、その指摘が適切か判断するバランス感覚が求められます。

文章を読んでもらう時のコツは、指摘された部分は一旦は「そういうものか」と受け止めることにあります。内心ではイライラしがちですが、反論しても意味がないので一旦は受け止めます。その上で、1日置いてから自分の文章を読み直し、指摘があった部分を吟味します。元のままの文章のほうがいいのか、指摘が適切なのか冷静に判断できるでしょう。あるいは、信頼の置ける専門家に見てもらうことです。信頼の置ける専門家であれば、指摘を素直に受け止められるはずです。

具体的な解決策。

ここまで、文章が上達しづらい3つの要因を提示してきました。このうち、2.と3.については、上記の文中に解決策を示してあります。問題は「1. 練習しづらい」です。これを解決しないことには、2.と3.について準備を進めても、無駄になってしまいます。1.に関する具体的な解決策を3つ提案します。

1. 月に1本書くと決める。

やや精神論的なところもありますが、文章の上達には書くことが欠かせませんので、とにかく書くと決めてしまいます。ペースは月に1本くらいが適当でしょう。あまり気合を入れ過ぎて、オーバーワークになってしまっては元も子もありません。自分にできる範囲の目標を設定します。仮に目標が達成できなくても、あまり気にしないようにします。また、最初のうちはうまい下手を気にする必要もありません。とにかく書くことが大事です。この段階では、他の人に読んでもらわなくてもいいでしょう。人に見せるのは、これは人に見せても大丈夫と手応えを感じてからでもいいと思います。

月に1本と決めて仮に半分しかかけなくても良しとします。原稿用紙に一行でも成果とみなします。上記で1行だけ書いてもあまり練習にはならないと伝えましたが、それは1行1行が別の文章の場合です。続きものの1行なら良いのです。1行しか書けなかった時は、次に書き出す時はその1行に続けます。仮にこれを毎日続けたら、1カ月でおよそ30行。原稿用紙1枚分を超えてしまいます。これなら、出来るような気がするのでないでしょうか。

分量は400~600字がおすすめです。このくらいの量に慣れてくると、800字1200字の文章にも対応できるようになります。文章の上達には慣れがとても重要です。1月に1本でいいので継続するようにしてください。

2. 自分なりのテーマを持つ。
書けない最大の理由は、書くことがないから、という場合がほとんどです。書きたいことがあれば書けるものです。そこで、「書きたいこと」を持つためにおすすめしているのが、自分なりのテーマを持つことです。

好きなこと、興味あること、疑問に思うこと、変えたいと思うことなど、自分なりにこれだと思うものを一つか二つ見つけ、常日頃から考えたり調べたりします。すると、伝えたいこと、訴えたいこと、すなわち書きたいことが内側から湧き出るようになります。そうすればしめたもので、書けない、書くことがないという状況が一変します。

自分なりのテーマを持つことは文章を書くためだけに有効なのではありません。少々大げさですが、人生や生活を豊かにするものだと思います。ぜひ自分なりのテーマを探してみてください。より詳しくはこちらも参照いただければ幸いです。

3. 楽しむ。
書くのを楽しむのは容易なことではありません。こんなことをいうと元も子もないのですが、本当のことなので言ってしまいます。特に最初のうちは、考えていることがなかなか言葉にならず、時に苦痛を味わいます。しかし、慣れるに従って書くことに段々と楽しみが見出せるようになります。とりわけ、600字なら600字、書ききった時の高揚感は何物にも代えられません。

それに何より、私たちは万年筆を使うという楽しみを持っています。書くことで万年筆を使う機会が得られます。今までほとんど使う機会のなかった万年筆が、文章を書くことで使えるようになります。こんなにうれしいことはありません!(ちょっと大げさですが)

原稿用紙に1行2行書いてみて、気に入らなければビリビリ破るなど、作家の真似事をするのも面白いのではないでしょうか(今どきそんなことをしている作家がいるどうか不明ですが)。冗談ぽく言っていますが、書くことへの抵抗を減らす意味では、原稿用紙をちぎって捨てるのも、一定の効果が見込めると思います。

原稿用紙を使わずにノートに走り書きをするのも有効な方策です。その際は文字数も気にせずに書き進めます。それを下書きと捉え、ノートで書きあがった段階で原稿用紙に清書すれば、万年筆を使う機会がまた増えるわけです。最初のうちは、下書きの文章が想定以上に長かったり短かったりしますが、そのうち文字数の感覚もつかめてきます。

書くことで、書く能力が向上するのは間違いないことです。そして、書くことで、万年筆を使う機会を得られるのも、間違いのないことです。ぜひ楽しみながら文章を書いてください!

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