万年筆を使ってみたいけど、どれを選んで良いかわからない、という声をよく聞きます。実際、万年筆は本当に多くの種類があります。たくさんのブランドがあり、色も形もさまざまです。ペン先の種類や太さを選ばなければならないのも、万年筆ならではと言えるでしょう。迷うポイントは多いです。そこで今回、これから万年筆ライフを始めようという人におすすめの一本を紹介します。
※独善的に選んでいる側面があることはご了承ください。
※本記事はプロモーションを含みます。
国内メーカーの代表作から選ぶ。
最初の一本は国内メーカーのプラチナ万年筆、セーラー万年筆、パイロットコーポレーションから選ぶことにしましょう。それも、それぞれのメーカーの代表作の#3776センチュリー、プロフィットスタンダード、カスタム74を強くお勧めします。国内メーカーを推奨するのは、国内メーカーの万年筆は日本語を書くことに最適化されているからです。日本語を母国語とする以上は日本語を書く機会が圧倒的に多いわけです。英語の勉強のために万年筆を使うなど、アルファベットを書くことを想定しているのでない限りは、国内メーカーにしておけば間違いありません。
中でも、上記の国内3大メーカーは、歴史も実績も十分。日本語を書く人にとって、素晴らしい万年筆を提供してくれます。付け加えると、3大メーカーは国内の多くの文房具店で扱いがあり、その代表作の#3776センチュリー、プロフィットスタンダード、カスタム74は、手に入れやすいという良さがあります。万が一故障した場合も、どの文房具店でもだいたい修理を請け負ってくれるので、いざという時に心強いです。
#3776センチュリー、プロフィットスタンダード、カスタム74の価格帯は定価で1万5000~2万円です。決して安くはありません。現在、安価な入門モデルも多く出ています。最初の一本なのだから安価なモデルで良いのではないかという声も聞かれますが、私個人としては最初から良い物を持ってほしいと思うのです。
ペン先は金ペン、字幅(太さ)は中字(M)がお勧め。
入門モデルと上記代表作の決定的な違いはペン先です。入門モデルはステンレスなど、基本的には鉄製(鉄ペン)です。一方、代表作は金(金ペン)を用いています。#3776センチュリー、プロフィットスタンダード、カスタム74のペン先はいずれも14kで、万年筆らしい書き心地を味わえます。今は技術が発達しており、鉄ペンでも金ペンと変わらないほどの使用感です。
それでも、「これが万年筆なのか」という高揚感みたいなものを味わってほしい。その感動がこの先、万年筆を使い続けるかどうか、ファンになるか否かを大きく左右すると考えるからです。付け加えると、入門モデルは見かけがカジュアルすぎると言いますか、高級感に欠けます。万年筆という高級筆記具を持つのなら、見た目にもそれらしいものを使いたいものです。
※金ペンについてはこちらも参照。
ペン先について言うと、もう一つ字幅(太さ)を選ぶ必要も生じます。プラチナ万年筆、セーラー万年筆、パイロットコーポレーションは字幅を豊富に揃えています。一例をあげると、プロフィットスタンダードには細い順に、「極細」「細字」「中細」「中字」「太字」「ズーム」「ミュージック」のラインナップがあります。これだけあると迷いますが、中字(M)をお勧めします。先述した通り、国内メーカーの万年筆は日本語を書くことに最適化されているので、画数の多い漢字もMで十分に筆記可能です。Mはノートにもメモ帳にも使える太さなので、汎用性もあります。
最近では万年筆の楽しみの大きな一つとして取り上げられることの多いインクにも触れておきましょう。#3776センチュリー、プロフィットスタンダード、カスタム74は、いずれも両用式となっており、ペン先に差し込んで使うインクカートリッジも、ボトルインクを吸い上げる専用コンバーターも使えます。最初のうちは簡単に使えるカートリッジをお勧めします。プラチナ万年筆、セーラー万年筆、パイロットコーポレーションのカートリッジであれば、どの文房具店でも手に入るでしょう。これも3大メーカーを使う良さです。万年筆に慣れてきてボトルインクも使ってみようかとなった時はコンバーターに切り替える。そうした使い方も可能となっています。
お勧めの一本は、#3776センチュリー。
上記を踏まえ、はじめの一本として使う万年筆はどれがふさわしいか。#3776センチュリー、プロフィットスタンダード、カスタム74の3つに絞られていますが、その上で、1本選ぶとしたらどれか。この問いに対し、私は「#3776センチュリー」と答えます。
この3本に大差はありません。どれも間違いのない、優れた万年筆です。どれを選んでも失敗ということはまずないでしょう。その中からなぜ#3776センチュリーを推したのか。その理由を以下に解説します。
◆ポイント1:書き心地が良い(個人の好みに合っている)
普段の生活では、ボールペン、鉛筆、シャープペンなどを使う機会が多いと思います。いずれもペン先は堅いものなので、筆圧は強くなりがちです。このため、どちらかというと、ペン先は柔らかめよりも堅めのほうが書きやすいと私個人は感じます。3本の中では、#3776センチュリーがもっとも堅い、より正確には手にフィットする感じがしました。
◆ポイント2:メンテナンスが楽
#3776センチュリーの最も大きな特徴の一つは、機密性の高いキャップです。「スリップシール機構」(特許取得)という革新的な技術を取り入れており、なんと2年間もインクの乾きを防ぐのです。通常は3~6カ月で乾いてしまうと言われていることを考えると、いかに優れているかわかります。あまり好ましいことではないのですが、最近は手書きする機会そのものが減っているため、意識して作らないとなかなか万年筆を使う機会を持てません。下手をすると数カ月、使わないこともあり、久しぶりにキャップを開けるとインクが乾いてしまって書けない。一度水洗いしないといけない、という事態は十分に起こり得ます。そうしたことを考えると、#3776センチュリーは非常に心強く、メンテナンスの労力を低減させてくれます(もちろん、頻繁に使うのが一番良いのですけどね)。
◆ポイント3:デザインを選ぶ楽しさがある
3本の中で、#3776センチュリーが最も色の種類が豊富です。具体的には「ブラックインブラック」「シュノンソーホワイト」「ローレルグリーン」「シャルトルブルー」「ブルゴーニュ」の5色あります。プロフィットスタンダードは3色、カスタム74は4色です。選ぶ楽しみがありますし、#3776センチュリーの透明感のある色味が個人的には一番好きでした。
以上3点が#3776センチュリーを推す主な理由です。ただし、繰り返しになりますが、3本に大差ありません。ただし、それぞれに個性があります。そうした中でどれか一本選ぶには、最終的には個人の好みを反映させるしかないでしょう。ぜひ実際に手に取って、書き心地やデザインを確かめて、「自分の一本」を決めてみてください。
最後にコストの話も少し。
参考までに、形に着目してもう少し3本の違いという点を述べます。3本の中では、#3776センチュリーがもっとも重量感があり、ペン先も大きくインパクトがあります。ただ、プロフィットスタンダード、カスタム74のスリムな形状とシャープなペン先もとても好きです。むしろ、単純に形という点だけ切り取れば、プロフィットスタンダード、カスタム74のほうが好みかもしれないくらいなので、選んだポイントには挙げませんでした。要するに、#3776センチュリー、プロフィットスタンダード、カスタム74は甲乙つけがたい良さがあるということです。
それと、最後の最後に、コストパフォーマンスのことを申し上げると、3本の中では#3776センチュリーがもっとも劣ります。定価は#3776センチュリーが2万円、プロフィットスタンダード、カスタム74は1万6000円です(いずれも税別 ※ネットだと安価に買える場合もあります)。以前の記事でもお伝えしましたが、今は万年筆の価格が上がっており、プラチナ万年筆、セーラー万年筆、パイロットコーポレーションの3社は値上げに踏み切っています。このため、プロフィットスタンダードとカスタム74が現状を維持するかは不明です。
古い話をしても仕方ないのですが、確か3本とも発売当初は1万円だったと思います。私の記憶が確かなら、セーラー万年筆がまず値上げしたはず。その後、プラチナ万年筆、パイロットコーポレーションと続きました。数度の価格改定を経て現状ではプラチナ万年筆の#3776センチュリーが、3本の中の最高額となってしまいました(物価高なのは理解していますが、値上げに収入が追い付いていかないのが、辛すぎるところです)。正直、この価格上昇のために#3776センチュリーという結論を変えようかとも思いましたが、この記事を上げる随分前から#3776センチュリーがお勧めと言っていたので、一旦はその気持ちを貫きました。
本記事のタイトルに「2024年版」と付記したのは、あくまで現時点の見解で、来年(もしかしたらそれより前にも)意見が変わるかもしれないという気持ちを込めています。実際、#3776センチュリーという結論に行きついたのも、紆余曲折、迷いに迷った末です。意見が変わったら、また記事を通じてお伝えしたいと思います。
本記事で取り上げた万年筆は以下のページもご覧ください。
編集後記
万年筆ライフをスタートさせようとする時、初めに持つべき一本を紹介しました。#3776センチュリー(プラチナ万年筆)、プロフィットスタンダード(セーラー万年筆)、カスタム74(パイロットコーポレーション)の中から選べば、まず間違いありません。私は#3776センチュリーを推奨しましたが、最終的には個人の好みで決めれば良いでしょう。その際、実際に手に取り、デザインを見たり、試し書きをしたりして、手になじむかどうか確認することをお勧めします。悩ましいのは価格で、発売当時に比べると現状で1.5~2倍になっていることです。さらなる価格の変動があれば、#3776センチュリー、プロフィットスタンダード、カスタム74以外の万年筆を視野に入れるかもしれません。このため、2024年度版と暫定的な決定としました。とはいえ、この3本が素晴らしい逸品であることには変わりありません。ぜひ手に取っていただければと思います。